2012.04.27 Friday
ミソジニーは三十路まで
GWの過ごし方、教えて!
お茶レディを辞めて久しい。
昼食を食べれば寝る、手作業の合間に必ず喋る、後輩の指導中にファックなど不適切な単語を発すると、およそ宮仕えには向いていなかったキリ子も、業務速度と正確性には定評があったため、周囲の評価はそれなりに芳しかった。しかし上司との面談に臨めば必ず「あとは仕事以外の部分だね」と苦笑混じりに言われ、その場はへらへら笑ってやり過ごすものの、昇給予定表を持ち帰るや疲れて転寝、悪い時には面談中に舟を漕ぐことすらあった。二十歳を過ぎてからほぼ四六時中眠いし、許されるなら三十時間はベッドに張り付いていられる自信がある。顧みるに、体質が定時仕事に向かなかったのかもしれない。
そんな風に笑って語るフリーランサーや主婦は、やんちゃ自慢の土方と何一つ変わりない。悪さの話など人様にするものではない。
ともあれ仕事の内容は概ね好評、放って置けば勝手に計算表やフォーマットを改良する便利さも相まって、その他については多目に見られていた。社会は結果を出せば良いのである。無論出せなくなったら痛い目を見る。そして一生周囲を納得させ続けるのはほぼ不可能に近く、なれば人間関係であまり突っ張るのは好ましくない。やはり結果だけではいけません。それが分かるのは大抵弾き出されてからですが。
ゴールデンウィークを心楽しく過ごせたのは学生時代までだった。お茶レディとして経理事務に勤しんでいた頃は本決算で後ずれしたルーチン業務に追われていたし、休めたら休めたで五月以降の業務量に気が気でないまま、遠出したらまた疲れるので文章を書いたりネット麻雀に明け暮れて終わった。むしろ大型連休を潰す代わり秋にでも長期休暇を頂きたかった。まこと組織に所属するのは面倒臭い。
同職種である連れも、五月頭まで休む事かなわぬと毎日枕を濡らしている。本当なら自棄酒と行きたいところ、疲れた身体に麦酒など入れれば二日酔いは避けられないしお腹も壊す。ストレスの逃がし所もないまま、後半の一人旅に夢膨らませている。お茶レディ時代はミッシェルガンエレファントの楽曲にかけて「GWなんてもうG.W.D.(ゴールデンウィークではない)だ!」と、メリー苦しみますみたいな駄洒落を連発したものだが、連れも似たような追い詰められ方をしているように見える。証拠に、半額セールのパンを大量購入したり新幹線の席をグランクラスに替えたり、目の前の商品に対して歯止めが効いていない。
ただ、買い物など罪無き方向に捌け口を見つけられるのは、馬鹿にする人はいれど健全な精神と言える。スポーツ選手が高級車を買う志向に似ている。その行き先を間違えると女性関係や賭博にだらしなくなり、身を持ち崩すこともある。タイガーウッズの女遊びなど最たるものだろう。であれば食事や買い物に余力を注げるならどんどん遣うのがよろしい。ゴールデンウィークに自作パソコンを組み上げるとか、思い余ってディズニーホテルのレストランでコースを頼んでしまうとか、すごくいいんじゃないかしら。キリ子に近所の地ビールバーで吐くまで飲ませてくれるのも素敵だと思う。どうですか、連れ。
連れが旅立ってしまうと少し気が抜け、実家に帰れば良いのだがそれすら面倒臭いので毎日寝て起きて飲んで食べて寝ての廃人生活を送ることとなる。去年一昨年はそうでした。三度同じ失敗を繰り返すのもつまらないから、水煙草カフェにでも行ってみようかと思っている。若しくは読みたかった本を全部読む。『マギ』『地獄の家』『ハンザスカイ』『京四郎』その他、積んである小説や何やら。両者を並行しても良い。ニコチンとアルコールにまみれて本を読むなんて昔の文豪みたいでわくわくする。あとは近くの公園でいちゃつくカップルを次々美少女カッター(※)で沈めるのも楽しそうである。待っていろよリア充!
※ダイヤモンドカッターの美少女版。後に立たせた相手の顎を肩に乗せ、引き倒すと共に自分も背中から地面へダイブし叩きつけるのがダイヤモンドカッター。小島聡のコジコジカッター、カール・アンダーソンのガンスタンが日本では有名である。
2012.04.26 Thursday
断然スポイルプリキュア
今までどんなあだ名で呼ばれたことがありますか?
大学一年生の時、チキンと呼ばれていた。恐らく四六時中おどおどしていたからである。今でもそのような態度は変わらず、コンビニでもサブウェイでも吉野家でもサバティーニでもオテルドゥミクニでも従業員と目を合わさず声掛けられれば縮み上がり、相手に聞えるようはっきり話せば声が上ずってしまう。両手の指は何のサインともつかない中途半端な形に握られ、落ち着かないのか絶えず指を擦り合わせている。
人生通して気の小さい臆病者を止めることは出来そうになく、なれば当時のあだ名は当を得ていたのだろう。次いで書くならキリ子は授業の無い時間帯も友達を求めてキャンパス内を徘徊していたため、彷徨う臆病者、ワンダーチキンの名を頂く日もあった。同時期に売り出し中だったサッカーイングランド代表マイケル・オーウェン。彼の通称「ワンダーオーウェン」とよく似ていたが、意味は全く違った。
はてさて四月も下旬。春は咀嚼の面倒な季節と、大学時代からの友人が言っている。彼女は今も噛まない食事に励んでいるのだろうか。そんな食べ方をしているといつまでも満腹にならず、量が過ぎて太ましさは増す。それはそれとして体重が増えたのウエストが締まるまで会わないの一年中嘆いているのはどんな了見なのだろう。また五月になれば日比谷オクトーバーフェストに欠かさず参加するせいもあり、何年経っても身体は締まらないらしい。年齢も考えると、今後死ぬまで再会できない可能性もあるため、もう諦めて頂きたい。キリ子もここ半年で随分太りましたから、お互い恥は捨ててお酒を飲みに行きましょう。最初の三杯奢ってください。
卯月から皐月にかかれば朝も暖かい日が増え、連れは朝食を食べなくなる。元々朝は弱いのだが、気温が上がると尚更食欲が減るのだとか。多くの病気を抱えながら常に腹を減らしているキリ子とはえらい違いである。多少分けてやりたいと常々思う。とは言え夏にかけての食事制限は自殺行為だし、朝からたんと食べねば昼食の比重が上がる。間食も知らず知らず増えるやもしれぬ。するとあまり栄養を摂っていないにも関わらず腰周りにばかり肉が付き体脂肪率はうなぎ上り、危機感を覚えて更にカロリー緊縮政策などとってしまいやがて拒食症、栄養失調、入院、死亡、遺影はぽっちゃり時代のにこやかな顔で、参列者の誰もがダイエットを勧めなければ良かったとむせび泣く。そういうのは全く笑えない。ですから朝は頑張って栄養を摂りなさい。昼食のカロリーは控え目になさい。塩加減は出汁で調節しなさい。品目を増やしなさい。汁物を一品入れなさい。肉は調理前に脂を削いでおきなさい。そのような工夫で健康的に体組成を変えて行くのです。と、タニタの料理本に書いてあった。それが不調や病気の予防にもなるのだとか。
数年前、元友人と病気について話していたところ、『医者にウツは治せない』という新書を薦められた。表題からして胡散臭いが、統合失調症を治す助けになった、示唆に富んでいるとべた褒めしていたのもあって読んでみたらば大外れどころか有害極まりない悪書であった。薬に頼らない運動療法や内観療法の具体例をいくつも挙げては投げっぱなしにし、最後は精神病自己責任論で締める。スポーツ記者上がりで元鬱病患者の作者らしい展開は確かに一理ある。一理はあるものの、現役患者に自己嫌悪の上塗りをする危険も孕んでいる。また、自分は気力体力で治した自慢めいた論調が端々に見られるのは読んでいて不愉快だった。
どんな立派な事を成していようと、偉そうで自慢臭い説教を垂れる人間は好きになれない。それは元友人にも当てはまった。で、彼は治った治ったと叫びつついつの間にか死んでしまった。治っていないどころか悪くなったじゃないか。啓蒙してくれたという織田淳太郎は、やっぱ信用ならざる男ではないのか。なんて問い質すことも出来ない。
彼について書くのは何度目かしらん。自殺した人間など全力で忘れて畜生道に追い込んでやれば良いところ、なかなか踏ん切りがついていない。一時間くらいノンストップで罵りたかったし、腰を据えて話もしたかった。そういう時間もないまま一人で彼岸へ旅立たれたのは今でも腹立たしい。
かように人死には面倒であるから、気力で物事をやっつけるのは止めておいた方が良い。特に精神病は完全なる器質障害といい加減人口に膾炙しなければならないし、薬も服用されるべきである。気合とか信念に頼るのは物理的方策が尽きるまで取って置きなさい。
2012.04.13 Friday
殺人波止場二十四時
最近ドジった事、ありますか?
身体がだるくて汗も止まらず片腕上げることすら意思の力に頼らねばならぬ。諦めて薬を飲んで寝倒して、賞味期限切れの鮭煎餅をつまみにポカリスエットなど飲んでいる。本当は冷蔵庫から麦酒を引っ張り出して宵の口は酔いの口とうそぶきたいところ、一応万年病気の身であるため無理はしない。疲れた身体に鞭打つや神経が立ち、周囲に強く当たって不愉快な思いを振り撒くもので、健康第一を謳っている。原稿を追い込む時は除いて。
健全な精神は健全な肉体に宿る。これを初めて言ったのは古代ローマのユウェナリスらしい。無論、この程度の含蓄に誰も行き当たらなかったとは考えづらく、なればたまたまメディアの表に出たのが彼なだけかもしれないし、同文を読んだ市民達は「そんな事ぁ分かってんだよ馬鹿野郎」と鼻をほじったかもしれない。どころか、本人も覚えていないだけで、十代前半に悪さばかりしていたユウェナリス少年は呆れ果てた父だか母によって物置に閉じ込められ三日間薄闇のなか水だけの生活を強いられ、遂に幻覚など見え始めたところで日用奴隷にこっそり助け出されると、罰を与えた両親も彼の疲弊具合におののき、しかし謝るのもばつが悪いということで、苦し紛れに放った台詞が「おいユウェナリス。分かったか。健全な精神は健全な肉体にこそ宿るのだ。現にお前の身体が壊れ行くに従い精神も病み始めたろう。これに懲りて、夜通し戦車で暴走したり、パルテノン神殿からネクタルを盗み出したり、デーメーテールの巫女をたぶらかすのは止めろ。分かったか。健全な精神は健全な肉体故成っす。ぐふふ。ふん、分かったか」だった可能性もある。
尤も、ユウェナリスが言いたかったのは「健全な肉体は健全な魂を宿すべきなのに、ローマ人何やってんだ。頑張れよ!諦めるな!やれば出来るんだ!」という熱い風刺なようで、上の逸話はおそらく的外れもいい所である。困った。ただ、不良に精を出していたユウェナリス君が先達によって立ち直り、熱血風刺詩人への路を歩んだ物語も想像出来ないことはない。いずれ、サンマーク出版の啓発本並に大きなお世話である。
ところでドールからプレミアムバナナが発売された。厳選された品種を特別な環境でゆっくり育てた、今までのバナナとは次元の異なる味と喧伝している。極撰バナナというネーミングも大上段に構えた感じが好もしい。近くの東急ストアで一度買ってみようと思う。
バナナはセロトニン分泌の元となるトリプトファンを含んでおり、鬱病治療に一役買っている。また栄養食としても価値が高く、一時はスーパーの店頭から安売りバナナが消えるほど大人気だった。健常者から精神病患者まで、猫も杓子も朝からバナナを食べ、ダイソーにはバナナケースが並び、ためしてガッテンでも特集が組まれる。阿呆らしいけど日本人の面目躍如というところで、フィリピンや台湾はウハウハ(死語)だったろう。特に台湾の阿里山バナナは戦前から美味と評判であり、戦後など奢侈品の位置付けに上り詰めたこともある。高知栽培により熟成までの期間が長く、独特の味や形になるのだとか。まったく阿里山は烏龍茶から野菜から、何でも採れる桃源郷のようだ。羨ましい。
他に鬱病食を挙げるなら、卵や牛乳、チーズなど。どれも朝食に打って付けの食材と言える。つまり、毎朝イングリッシュブレックファストをいただいていれば鬱病など恐れるものではないのだろうか。だが英国人は陰陽のベクトルで言えば辛気臭い方向を指しているイメージもある。また、サマセット・モーム曰く「イギリスで良い食事をしようと思うなら、朝食を三度とれば良い」ので、おそらくは昼食や夕食が美味しくないため鬱病患者も結構な数を抱えているのだろう。
文部科学省の調査によると、上記の他ひまわりの種もトリプトファンを多く含んでいる。であるなら鬱病治療食に皿一杯の種を添えたり、お酒のつまみに軽く一皿など好もしいやもしれぬ。けれど種ばかり食べていたらげっ歯類の心持ちになり、たがが外れるたび卵豆腐を頬袋に詰め込む、ルームランナーに惹かれる、やがては鉄球の中をモトクロスバイクで回り出す恐れすらあるのでやっぱりバナナとか牛乳で我慢しておきなさい。
引っ越してから健全な朝食により連れと自分を健全な肉体、引いては健全な精神の持ち主に仕立て上げようと頑張っているのだが、昨朝フライパンを空焚きして盛大に落ち込んだので暫しお休み。
2012.04.09 Monday
あらゆる場所に借金が……
天気が悪い日、家で何してる?
昔から低気圧に弱い。
大学一年の頃だか、友人と天気と気分の話になって、雨は憂鬱で曇りはぱっとしない、温かな春の午後二時が人生にとって一番好ましい旨を伝えたところ、空模様ごときで一喜一憂するのは精神が子供だからと笑われた。しかし大学を卒業してもお茶レディを経験しても相変わらず雨天が気に食わず、蒸れた満員電車を避けるためにフレックス出社など利用しては上司に叱られ、会社から落ちこぼれた現在もその傾向は全く変わらない。むしろ増していると申し上げても差し支えない。
鬱病の本には日照時間と抑鬱の間に相関関係有意と書いてあり、十〜十二月は気の重くなる方が増えるらしい。これを季節性鬱と呼ぶ。会社常駐の医師も精神安定剤の消費量が増えるとか増えないとか言っていたような気がする。
セロトニンという神経伝達物質が滞りなく流れなかったり絶対数が少ないと、気だるい、物悲しい、悲観的、食欲減退、考えが纏まらない、眠れないといった症状が現れる。同物質は、神経の感度を高めて興奮や不安、ハイテンションを喚起するノルアドレナリン、ドーパミンの分泌を抑制する、バランサーの役割を担う。故に流量が減れば神経は昂ぶり続け、心身のバランスが崩れるのである。
鬱病、また不安神経症、自律神経失調症、パニック障害などは、以上の物理的原因により発症する。気分だ心だと言っても所詮は電気信号の繋がりに過ぎず、スイッチングの調子次第で良くも悪くも変わって行く。なればこそ、身体は大切に扱わなければいけないし、おかしな部分が見つかったら全力で治してやるのが真っ当な態度と言える。その点に関して流行性感冒と精神病に根本的な違いはなく、鬱病は心の風邪と言われることもあるが、事実同じ機能障害なのだから、慌てず騒がずお医者様に相談なさい。
メンタルもフィジカルの延長と考え実生活で来した不調は実生活で整える。まことに以って唯物論的な帰結を、そろそろ一般常識に採用する時期ではなかろうか。
時に、季節性鬱は日に当たる時間が少なくなることにより体内時計が狂う、またセロトニンが減って起こると言われている。確たる証拠が示された訳ではないものの、強力な光を当て続ける治療法がとられているのを鑑みるに、状況証拠は揃ってそうである。足りない分の光を当てて治すなんて随分と乱暴なやり方だし、では日焼けサロンに通う人間が鬱病になり辛いかと訊かれれば首を捻らざるを得ない。ただ、チョコボール向井や松崎しげるの塞ぎ込んだ姿を想像するのは難しく、黒ギャルやギャル男も概ね幸せそうな印象がある。これもまた、状況証拠だけで充分かもしれない。
日照時間で考えると赤道付近の国々は鬱病の罹患率が低いようにも考えられる。しかし、生活が病気を生むのであれば文化や宗教、政治経済要因も多分に関わってくる訳で、単純に比べるのは無意味だし、同一条件で日照時間だけ変える実験も、おそらく臨床上の意味は大きくないだろう。その意味では、怪我だとか免疫低下よりも持って回った病気であること間違いなく、簡単に治せ治せと言い切るのも乱暴過ぎるかもしれない。
天気が悪ければ、そんなこんなで大体寝転がっている。表に出るのは面倒臭く、時に食事すら抜かしてごろごろのた打ち回っている。そうして日が暮れる頃にやっと起き出し、文章を書いたり酒を飲んだり家事を片付けたり連れをマッサージしたり、或いは近所の小学校でせっせと石を焼き、片っ端からプールへ放り込んでは水の蒸発する音に興奮して雄たけびを上げ、肉のハナマサで買った丸鳥を振り回してバーバリアンごっこに興じているうち、夜中こっそり泳ぎの練習をしに来た美少年と鉢合わせて警察を呼ばれかけ、急いで取り押さえたらばバランスを崩して共に水面へ真っ逆様、足が付く深さなのに二人して溺れかけ、やっと浮き上がると何だか不思議な雰囲気でどちらともなく笑い出し、一しきり済んだところで互いに抱き合っているのを思い出して頬を染め、ボーイミーツ美少女の運びになるかと思いきや先ほどの蒸気に釣られて飛来した火星人が地球を焼き払って一巻の終わり。
2012.03.10 Saturday
匕口でポン!
占い、信じますか?
エスビョルン・スヴェンソンが死んでから何年経つのかすっかり忘れており、今しがた調べたところ二〇〇八年半ばとのこと。仏教での三回忌もとっくに終わった。転生ないし救いを得て別人格として新たな生を謳歌しているだろうから、有り体に言えば、もう、私達の知っているエスビョルンスヴェンソンは存在しない。生きていればまた日本公演をやってくれたろうに、勿体無いことである。スキューバダイヴィング中の事故だそうで、酸素不足か水圧による肺臓破裂かはたまた海底火山の噴火に巻き込まれたか、いずれ人間、機械の力なく生きられない場所など軽々しく踏み込むものではないように思う。大きなお世話だろうか。仰る通り。キリ子だってマカオの高層バンジージャンプやニュージーランドの巨大ブランコを体験したいので人のことは言えない。
いつだったか、友人と一緒にエスビョルン・スヴェンソン・トリオのライヴを聴きに行ったことがある。箱というかホールは渋谷BUNKAMURAの上の方だった。表現としてライヴよりはコンサートの方がしっくり来るし、ステージも実際そんな感じで、ジャズのダイナミズムを満喫出来たとは言い難い。幕が上がって粛々弾くより、袖から出て来て手など振りつつ音合わせがいつの間にやらインプロヴィゼイションへ移る、そういうのがジャズライヴなのではないかしら。勿論コンサートもライヴの一種ではあるが、日本語の枠内で運用する際には包含関係よりも独立関係とするのが適当なように思えてならぬ。
当日は何だか物足りない心地のまま坂を下り、スパゲッティか何かを食べて帰った。それから暫し冷却期間を過ごすと、後日発売になった"Live in Hamburg"をおっかなびっくり聴いて、想定外の迫力に圧倒されると同時、何故同じ事を渋谷でやってくれなかったのか憤ったり再訪への期待を高まらせたものである。で、結局実現せぬまま死んでしまった。
死んだ死んだとくどくど申し訳ない。おそらく低気圧のせいで気分が落ち込んでいる。相変わらず寒いし、目覚ましテレビの天気予報は何度目か知らん冬将軍再来を告げている。弥生は香港より上海の中空。
思い返せば三月の半ばは大体寒く、末日に大雪の降る年もあった。旧暦では春の最終月だというに、まこと地球温暖化による異常気象は先が読めない。古館か誰かによれば気候変動は片っ端から温暖化によるものであって、七十年代の寒冷化も温暖化、台風も温暖化、全ての赤潮、巨大ハリケーン、オーストラリアでの蝿や鼠大発生、大雨洪水、果ては今後予想される小氷河期も温暖化が原因なのだろう。全く自然科学は当てにならない。振れ幅の大きさを鑑みるに、天気の見るのは易学に頼んでも構わないのではないか。構うか。仰る通り。キリ子も、星座占いと天気予報の比重が反対になったら多少は構う。
ところで自然科学に振れが生じるのは当然である。何しろ宇宙の規則が解明されていないのだから、その一惑星たる地球を完全に理解出来るはずもない。学問の多分に漏れず、自然科学、的を絞るなら気象学、は、発展途上の体系と言えるし、その点のみ抽出するなら易学に通じる。というより学問の地平において自然科学と易学は平等と考えて構わない。なんて断言すると科学的根拠信奉者、一緒にされたくないような厳しい表情を浮かべるだろう。しかし、易学は突き詰めれば統計学に行き当たり、統計とは即ち演繹であるから、観測系の自然科学と原理は同じではないか。違うか。何が違うか。手法か。ならば易学が充分なサンプルを得た場合、物理・化学・地学・生物学と並び称されるのだろうか。或いは所詮人文科学と唾を吐かれるか。人文科学は自然科学よりも科学性が低いのか。
高低以前に性格の違いはあるかもしれない。キリ子が個人的見解から統計の地平に並べているだけで、現実にはもっと複雑且つ高度な壁が横たわっているのかもしれない。そういった問題にはあと二十年くらい生きてから首を突っ込むべきとも思っている。不勉強なもので。
話を戻すと、二年か三年前にエスビョルン・スヴェンソン・トリオの楽曲を小題に掲げて短編を書いた。現在よりも低気圧が強かったのか、中々に痛くて冷たそうな進行ではあるものの、最終的にはそれなりの結論を出せたように思う。良かったら読んでくださいまし。
2012.03.08 Thursday
百二十八bpsの辛亥革命
この春に旅行するなら、どこにいきたいですか?
死んでしまったピアニストの新譜が四月頭に発売される。スウェーデンの国民的ジャジスト、エスビョルン・スヴェンソン・トリオ、今度こそ最後のオリジナルアルバムのようである。前作"Leucocyte"がモダンジャズよりも現代音楽に近い難解な楽曲群に埋め尽くされていたのを顧みるに期待の程は低めだが、今度こそ遺作、というよりも忘れ形見に近く、捨て曲であれ尖り過ぎた実験であれ、黙って受け入れるのがファンとしての責務のような気がしている。気のせいかもしれない。
ところで先月半ばに死んだ元友人の三回忌があった。死ぬ前には殺す殺すと剣呑なメールを送り続けて来、キリ子の病気を悪化させた罪な元友人も、此度晴れて正式にあの世の住人となった。若しくは既に転生を果たしているかもしれない。キリスト教だったら、救済されて神との正しい繋がりでも取り戻すのだろうか。宗派によりけりか。人間が原罪を背負っているまでは良いとして、上手くすれば神が救ってくれるなんて考え方は好みでない。それは親の言う通りに生きて全ての責任を丸投げしろと言っているに同義ではなかろうか。その関係を通す限り、キリスト教における人間は未熟で愚かな、手を引いて導かねば必ず過ちを犯す存在なのだろう。実際そうにしても、自分の責任すら取らせない態度は随分舐めたものである。勿論キリスト教全てがそうとは言えないだろうし、ユダヤ・イスラムと合わせた一神教の中でもそれぞれ神の解釈は異なる。神を一括りに論じることは出来ない。というか信仰は非常にデリケートな問題であるからあまり触れたくない。ああ、いや、信仰より宗教の方が、そう、面倒臭いし皆五月蠅い。
死んだ元友人はお寺さんに葬られていた。仏教の仕組みはよく知らん、いずれ六道の何処かに行ったと思う。人は死ぬと十王の裁きを受け、結果天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道の何れかに生まれ変わる。前三者が合格、後は不合格と考えていただければよろしい。天道は超人、人道はレベルキープ、修羅道だったら人間の中でも辛い部類に入る。これら三道に滑り込めば人間として認められ、それ以下は落第で罰ゲーム、地獄道に至っては何者にもなれないほど業が深いため先ず罪を濯がなければならない、云わば中浪。雑な比喩で申し訳ない。
但し、畜生道以下に落ちるケースはあまりない。上述の十王とは閻魔を含め十の審判官であり、彼らに裁かれる十回のうち最後の三回は落第浪人を避けるための救済措置と位置づけられている。適当な比喩を続けるならば追試・二次募集、或いは出席日数で自動繰上げ(※)というところか。仏教思想にセーフティネットがあるのは興味深い。
さて、十王で最も有名な閻魔大王。彼は代表格のように見られているものの、裁くのは最初でも最後でもなく、五番目という曖昧な順番をあてがわれている。誤解を承知で喩えるなら、地方裁判所の長辺りが妥当なところか。嘘を申せば舌引っこ抜き、地獄の底へ真逆様などと恐れられるのは、地獄の王を務めることから来ているのかもしれない。彼の裁きは死から三十五日目に行われるそうなので、死者について疚しい点があれば事前に閻魔の化身(偶像?一尊と呼ぶそうな)とされる地蔵菩薩を拝み倒しておくのがよろしい。
次いで書くと、十王審判は概ね七日毎に行われる。初七日から始まり七七日(四十九日)で大勢が決まる。それから百か日、一周忌、三回忌の救済措置が待つ。そんな訳で死後の裁きを終え転生に成功しただろう元友人には一つ畜生道辺りでのんびり過ごしていただき、殺す殺すと脅さないくらい丸くなるまで人道には戻って来ないで下さい。それまでお地蔵様にお祈りしておくから。嗚呼、地蔵の沢山ある箱根に行きたい。
※:これは義務教育内の措置でした。時に橋下徹は小学校でも留年させるべきと仰っています。出席点を減らすのでしょうか。勉強が出来ても大きな病気に罹ればアウトでしょうか。それともテストの比重を増やすから大丈夫ですか。馬鹿は一生卒業出来ませんか。小学校の定年制も設定するのでしょう。おめえ、大好きな奴隷労働力がいなくなっちゃうぞ。
2012.03.05 Monday
頭は悪くない方が良い
オススメのTwitterアカウントは何ですか?
実家ではそろそろ四年落ちになるアイマック二十四インチオールインワンを使っており、ハードディスクが足りなくなりつつある点を除けば現役一線級選手である。一方、連れ宅のウィンドウズ機と言えばモニタの縦横比が四対三だったり情報処理速度に難があったりトレイローディング式のドライブが開かなかったり、年末発覚したことにはDVDを焼けなかったり問題が多く、それでいて運用にさしたる支障もないため買い換える気配など全く見えない。キリ子が動画や立体図面、レイヤーを一万も二万も重ねる複雑な画像処理を必要とする仕事であればすぐさまアイマックマイラヴを移設するところながら、如何せんワードくらいしか使わないため踏ん切りがつかず、かと言って連れにハイスペック水冷タワーを買って差し上げる財力やハイエンドのアイマックへの移行を促す甲斐性はない。そして連れはマックを使うくらいならリナックスを導入する方がまし、更には実家の巨大マックが気に食わぬ釘バットで滅多打ちにしてくれるとすごむもので、当分のあいだ十七インチのモニタと差し向かい、ウィスキィなどすすりつつちまちま執筆に精を出す予定である。
数あるツイッターアカウントの中で敢えてお薦めを一つ挙げるなら、kirikox以外にない。ライヴライティング・文章レディオと称して一日に原稿用紙二十〜三十枚分の呟きを垂れ流した一時期の勢いは失われているが、今も時折アトラクティヴな発言が見られる。文章レディオもいずれ復活するとあちらこちらで噂されているし、取り敢えずフォロウして様子を見るのがよろしかろう。
時に、葉物は高価な季節なれど根菜は相変わらず安定価格ということで、近所の伊勢丹で半額セールになった蓮根を買っては金平に仕立て上げている。一キロ近くまとめて作り、三、四日かけて食べる。台湾風肉味噌も大量に作っておくと、朝食はこれらに冷奴など加えれば事足りてしまう。まこと不精な食生活であるが、連れは少なくとも表向き喜んで食べてくれるし、何より食費が安く済むものだから、食生活まるで好景気時のウォルマートのごとく、大量購買大量消費の輪に嵌っている。勿論、嵌れるから嵌っているだけで、要望があればいつでも日本的コンヴィニエント食生活に戻すし、今の所は沢山作っても食べ切れる二人生活を満喫している部分もあるから、向こう三年くらいは金平、肉味噌、シチュー、カレー、ポトフ、肉じゃが辺りを基軸に生きて行くのではなかろうか。
で、鍋一杯の料理を作る時は大体ウメッシュを飲む。音楽を流しつつ、煮詰まったら本も読みつつ、されど手すきの時間は大して生まれてくれない。となれば酒でも飲む以外に気軽な楽しみが思いつかずく、さもなくば歌って踊ってお玉でカレーを掬って西田ひかるの物真似でもする他ない。一人で西田ひかるの真似は後々落ち込むので酒を飲んでいる。ウメッシュと言えば、風呂上りの女性が冷蔵庫を開け、隙間なく置かれた缶を見て安堵の溜め息を吐くコマーシャルフィルムが有名だが、あれはどう見てもキッチンドランカーだった。アル中の視点からはさぞ恐ろしい映像として脳裏に焼きついたことだろう。キリ子も似たような経験、具体的にはアーリータイムズのボトルを抱えて文章レディオに精を出していたことがある。医者家族連れに禁酒令が出されて漸く落ち着き、一年以上を経てやっとこウィスキィ解禁されたのは嬉しい思い出だが、それ以降も軽いフラッシュバックから深酒は出来ずにいる。やれおっとろしいことじゃ。
ウメッシュもアル中に懲りたのかノンアルコールなる新商品を発売した。でもそれって単なる梅ソーダではなかろうか。ウメッシュの冠に意味があるのか。では三年後にはウメッシュノンアルコールほろ酔いストロングカロリーオフノンファットシュガーレス無果汁風味微炭酸なんて商品がチルドケースに並ぶのか。
さておきアイマックの新しいのが欲しい。マックプロでも一向に構わない。
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